本の感想 「子どもの宇宙」(岩波新書 河合隼雄著)

cosmos222012-07-05

たしか3〜4年前に読みましたが、再度読み返し以前とはまた違う印象を受けました。
この本で著者が言いたかったことを考えてみたいと思います。
この本の文中に、
「おそらく、人間というものは真に心の成熟を遂げるためには、一般に否定的な評価
を受けている、憎しみ、怒り、悲しみなどの感情を体験することも必要なのであろう。
そして、そのようなことを体験しつつ、なおかつ関係の切れない人間関係として、家族というものは大きい意味をもつものなのであろう。
ただ、大人たちは、子どもがそのような体験をしつつあることを、ある程度は知ってやることが必要で、大人の共感が少なすぎるとき、大人と子どもの絆は断ち切れてしまうことになる。…」と、あります。
この本で著者は児童文学の名作を事例にし、ある家族の日常生活を通し、登場人物の心の
分析をしています。
また、著者の専門分野である子どもの遊戯療法の事例を紹介し、その中でその子供の通路を見出し、その子供の「とき」を待ってあげることの重要さを示しています。

私は、自分自身が子どもだった頃を思い出してみると、苦い思い出ばかり蘇ります。
その当時から上手く自分を表現することができていたら、また違う人生を送っていたのかもしれません。
また、そこまで昔に戻ることができないとしてもせめて10年前にでも…と後悔することもありますが、この本を読み返した今が、私にとっての「通路」なのかもしれない、などと考えることにします。
過ぎてしまったことは戻すことはできません。そのことを後悔したときにはじめて許す心がどこからともなく聴こえてくるのかもしれません。
「どんな子どもにも無限に広がる宇宙のような可能性をもっている」
そういうふうな眼で子どもたちを育ててほしい、と著者から私たちに伝えているメッセージではないかと受け取りました。