あいにくの天気

cosmos222015-04-03

今日はあいにくの天気…。
桜が満開なのは昨日までだったのではないでしょうか…。
満開の桜をみていると、なんだか物語のようで切なくなります。
これでもか、これでもかと、なにか、花から訴えかけられているように
かんじてしまいます。力尽きて散るのは一瞬で、なんだか虚しさを感じます…。

先日、本屋へ行って整列された本を眺めていたら女優の宮沢りえさんが
表紙を飾っている小説「紙の月」が目に入りました。
一万円札を体中に巻きつけているとてもインパクトの強い表紙です。
なんとなく宮沢りえさんの美しい眼に惹きつけられて購入してしまいましたが…。
なんと、2日で読み終えてしまいました。
何するのも時間のかかる私にしては早い方です。
ただ内容に惹きつけられてしまいました。
いったいこの主人公はどうなってゆくのか…、読み終えるまで心配をしていました。
そして読み終えてからも虚しさと悔しさが残り「なんだかね…」とため息しかでませんでした。

ひとりの人間には「光と影」の部分があり、自分が得意としていて人から褒めてもらえるような「光」の部分とそれとは反対に自分で認めたくない他人に隠している「影」の部分を持っている、と本で読んだことがあります。
絵画で独りの人間を描く時もちゃんと影の部分を入れないと立体的になりません。だからきちんとしたところに影をつけること、絵の中に上手に描いてゆくことを私は教えてもらっています。

この主人公は子供のころから正義感、ボランティア精神が人より強く、環境的にも恵まれていた。結婚をし普通の暮らしをしてきた人。
それがひとりの大学生と知り合ったことがきっかけで犯罪に手を染めることになってしまう…。きっかけはそんなことだったのかもしれないけれど、この主人公の暗い部分を見せてもらったように思います。
それが犯罪だと認識していても、本人にはその意識がなく沼にはまってしまっていることも分からないでいる…。
最後までばれないように逃げ通そうとする凄まじさに圧倒されました。

読み終えてからも虚しさと悔しさが残っています。
なんでこの本がこんなに苦しいのか、いたたまれない思いを感じてしまうのか…。
もしかしたら自分の中にも自分では意識していない、何かしら似たものがあるのかもしれません。
だから余計に読んでいて悔しくなるのかもしれません。
そして、もしかしたら自分では気づいてないだけで誰かを傷つけているのかもしれないと考えるとちょっと恐ろしいです…。
そして正義感が強ければ強いほど、知らないうちに逆の部分も強く働いてしまうのではないかと…。
そんなことをいろいろと考えさせられた小説でした。