はてしない物語

cosmos222014-02-13

昨夜、『はてしない物語(下)ミヒャエル・エンデ作』 を読み終えることができました。
読み終えて感じたことは、「これは本当に児童文学?」という疑問でした。
ファンタジー小説でもあり、また物語が現実世界の核心を現わしているように聴こえてきたりとハラハラさせられる物語でした。

この主人公の少年が、もしも現実世界に戻れなくなっていたらどうなっていたのだろうか…と想像します。
もしかしたら、あの学校の屋根裏の物置でしみだらけのマットに巻かれたまま死んでしまっていたかもしれない。もしかしたら精神がおかしくなり生きながら闇の中をさまよったままではなかったか…。考えるととても恐ろしく感じます。

少年はチビで太っちょでX脚の足をしていて不器用で弱虫で頭も悪い。
いいところはなくクラスの子供たちからいじめられていた。
学校は少年にとって居心地悪く怖かったのだ。
そんなある日、少年は一冊の本に導かれて物語の中に入ってしまう。
そこでは自分願ったことがすべて現実になってゆく。
そして自分が否定していた容姿も美しく変わり、英雄となり皆から脚光を浴びせられる存在になってゆく…。
自分の願いは皆次々に実現されてゆく…。
いつしか現実のいた世界に戻りたいと思えなくなってしまっていた。

ただ自分の願いが満たされるたびに現実世界の記憶を少しずつ失ってしまっていることに少年は気が付いていなかった…。
帰る道もわからなくなってしまっていた。
願いごとは永遠に続くわけではなかった。
それは「真の意志」を見つけるまでだったのに…。
いつのまにか欲望が肥大化してゆく…。
欲望を大きくしてしまった少年に待っていたものは…。

旅を続ける少年は、ある場所で最後の望みを見つける。
「愛すること」それが真の意志だったことを知る。

そして終盤、こちらの世界でいろいろなことを経験した少年は一回りもふた回りも成長した姿で現実世界へ戻ってゆく…。

私は長い間、この本を本棚の奥に閉まったままでした。
もう少し早く読めていたら違う生き方があったのかもしれないな、とも感じましたが、その本を読む時期がやっときたのかと思います。
人を愛することができる人は自分の事も愛することができる人。
人の事が大事にできない人は自分の事も大事にできない人。
そんなことを教えてくれる物語でした。

最後に、少年がこちらの世界に戻ることができて本当に良かったと思いました。